タコの卵

どこまで我慢するのが身近な恐怖なのか

清水潔「鉄路の果てに」を読むと何かを学び、何かを知る旅がしたい!

ロシアって国と気候に無駄に憧れがあって、凍てついた大地シベリアなんて文字だけで心が踊りそうになる。ロシア料理も気になるしウォッカを飲んで身体を温めていたい。

分子の運動が最も止まりそうな地域になぜ無理やり住んでるのか気になる。

人間だけが止まらない土地シベリア。よくわからない満州国。日清戦争と日中戦争って違うの??そんな曖昧な知識で本書を読んだら最後。いつのまにか朝になっていた恐ろしい本なので紹介したい。

 

目次

 

 

「だまされた」
父が遺したメモを手掛かりに、
気鋭のジャーナリストが戦争を辿る。
いつの時代も、国は非情だ。

 

 

普通じゃない

清水潔最新刊「鉄路の果てに」

 

鉄路の果てに

鉄路の果てに

  • 作者:清水潔
  • 発売日: 2020/05/21
  • メディア: Kindle版
 

 「ジャーナリストの教科書」こと清水記者 最新刊は父の記憶をたどる鉄道旅行記だ。

しかもただの鉄道旅行記じゃあない。

 

偶然にも目にした父が残した普通じゃないメモ。

戦争で満州に行き、ソ連の捕虜となりシベリア強制労働送りになった清水記者の父。

 

普通はそんなメモを見た感想と取るべき行動は

 

「辛かっただろうな…」

「だまされたって何?まぁ父も多くは語らなかったし…」

「メモを見つけれてよかった。家に帰ろう」

 

普通はそんなもんだろうと思う。

しかし、清水記者は普通じゃない。普通じゃないから父が残した普通じゃないメモをきっかけに

鉄道を使って韓国→中国→ロシアと父が体験した戦争を追体験しに行くのだ。

 

今どき海外旅行は飛行機でひとっ飛びだが、なるべく当時の行動を再現するために鉄道で行く。しかも国境越えも鉄道だ。どれだけの人が自分の両親のメモだけで海外鉄道旅行するだろうか?

清水記者はジャーナリストでもあるので、自分で現地に行き自分で情報を集める

「調査報道」

の第一人者である。父が残したメモ「だまされた」何からどうやってどうして「だまされた」のか自分で現地に行って調べに行ったのだ。

 

知ろうとしないことは罪だ

 

上記の言葉は清水記者の心である。

 

気になってしまったんだろう。父が残したメモが。そうなってしまったら清水記者はどこまでも行く。亡き父のメモを頼りに日本がどうやってどうしてなんで戦争に挑んで勝って負けて行ったのかも明らかにする。

日清・日露・日中戦争から満州国、ソ連進行まで日本近現代史を清水記者と一緒に旅している感覚に。知ろうとしないことは罪なので本を読んで一緒に知ってほしい。

「鉄路の果てに」は知りたくなかった近代史を嫌でも知ってしまう恐ろしい本でもあるのだ。

 

青木センセイ

「鉄路の果てに」かかせない名キャラクターに青木センセイの存在がある。

 

消された文書 (幻冬舎文庫)

消された文書 (幻冬舎文庫)

  • 作者:青木俊
  • 発売日: 2018/12/06
  • メディア: Kindle版
 

 

 

潔白 (幻冬舎文庫)

潔白 (幻冬舎文庫)

  • 作者:青木俊
  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: Kindle版
 

骨太な作品を書いた小説家の青木俊。

本作では清水記者のパートナーとして鉄道旅行を共にする。

中国語とロシア語もできるし、何度かロシアに行ったこともある頼れる仲間だ。

そんな青木先生がいつのまにか青木センセイになり、酒を飲みながらご飯を食べる萌キャラになっていくのが「鉄路の果てに」第二の魅力だ。

 

韓国、中国、ロシアと色々な国の料理を食べる二人だが、青木センセイの豆知識が楽しい。

ロシアの料理はとにかくまずいらしい。

 

「黒パンと川魚の酢漬けぐらいしかない」

「酒は鼻が燃えるウォッカだけ」

「運が良くて『オームリと黒パン』。悪ければ『黒パンとオームリ』です。」

 

意味不明なぐらいロシアをディスる青木センセイに思わず笑ってしまう。

常に明るく現地の言葉もわかってるのかわかってないのか強気で攻める青木センセイにいつしか頼もしさを感じるのは自分だけではないだろう。

そんな青木センセイが気になったら上記二作をぜひ読んで欲しい。全くイメージが違ってそのギャップも面白い。

もう気づいたかもしれないが…「鉄路の果てに」は青木センセイを楽しむ本なのだ。

 

鉄オタ

タイトルが「鉄路の果てに」だ。

鉄路??沖縄県民の僕には馴染みがないが、鉄道の路線のことらしい。

 

本書は朝鮮半島から泣く子も黙るシベリアまで鉄道で行く旅。

普通に考えたら「鉄道旅行なんてちょっといいね~」って思いがちだが、普通じゃない清水記者だ。

 

なんでこんな長距離路線ができたのか調べていく。

 

9割の人が調べようとも思わない事を調べていく。

凄く調べないで欲しい事もガンガン調べていくので本書を読み終えるころにはちょっとした鉄道オタクになった気持ちになる。

 

簡単に鉄道旅行と言うが、ロシアから伸びる長距離路線の材料は血と涙と戦争だった時は衝撃だし、国ごとにレールの幅が違う事も初めて知った。

 

レールの幅が違う理由が全くわからない。普通わかる??

 

本書で鉄道の大切さも知れる。知れるって言うより大陸の戦争は鉄道との戦いなのだ。

本当に鉄道オタク。鉄オタ知識が満載の清水記者はガンガンに説明してくれる。

ただ説明するだけなら本を読んだ俺でも出来るが、そうじゃない。

 

実際にその鉄路に乗ってしまうのが本書の醍醐味だ。

調査報道すぎる。憧れの車に乗車するのとでは難易度が違いすぎる。

 

海外鉄道オタや戦争兵器鉄道オタにとってはたまらない内容だ。

九州程の面積を誇る凍ったバイカル湖に線路を作ろうとした話なんか嘘みたいな怖い話も。

また鉄道の地図や写真もあるのでなんとなくイメージしやすい。鉄道に詳しくない人にとっても写真は本当にありがたい。

 

本書を読めば清水記者と同じ体験が根性だせばできるかも。

あるいみガイドブックなのだ。

 

 

本書の果てに

父が残したメモをきっかけに青木センセイと鉄道旅。

戦争が残した爪痕を感じ取り、なぜ戦争になったのか。勝ったのか。負けたのかを調べながら言葉が通じない高圧的な車掌にあったり、レールの幅が違う理由が実は日本軍にあったり、料理が美味かったり凍ったカップラーメンを食べるはめになりそうだったり、KGBにハメられそうになったり……。

 

とにかく面白い。一緒に鉄道旅をしている気分になってしまう。

同時に国って言うのはなんなのか?なぜ国の命令があれば簡単に人を殺せてしまうのか?勝った戦争は良い戦争で負けた戦争は封印して語られもしない。

 

なんで清水記者の父はメモを残したのか。

なんで戦争は始まったのか。

なんで線路があるのか。

なんで青木センセイは黒パンにこだわるのか。

 

清水記者に発破をかけられた気持ちになる本書「鉄路の果てに」。

疑問に思っている「なぜ?」「なんで?」があれば自ら調べて体験し学んで知る事が大事だと再認識させられた。次は本を読み終わった貴方の番だよ!とバトンを渡された気持ちになる。

 

 

みんなも「鉄路の果てに」を読んで欲しい。

面白いのは間違いないが、黒パンの味が気になってしょうがないので今すぐ黒パン探しの旅に出ます。

知ろうとしないことは罪なのだから。

 

鉄路の果てに

鉄路の果てに

  • 作者:清水潔
  • 発売日: 2020/05/21
  • メディア: Kindle版