書道の墨を固める夢をみた。
小学生や中学生の頃って書道やるよね?その時に固まった羊羹みたいな墨とボトルに入ってちゅーって出すタイプの墨に別れてたと思う。便利さで言えば圧倒的ボトル何だけど、便利と日本の伝統ってかけ離れてるほどよくて、不便さが強いほど道としてイケてると思っている。
だって秘伝書とかあるの武道だけじゃん。ボクシングやレスリングに秘伝書なんてないもん。合理性と非合理性の闘いよ。秘伝書とか門外不出の技とか一子相伝とかは憧れるんだけどね。
墨よ。墨。もちろん僕は「固まった墨」派だった。男の子なら自分の腕で、墨をスリスリするのに憧れないやつはいない。ボトルをちゅ~っとして墨完成なんてつまんないよ。水を少し垂らして、スリスリ……スリスリ……この一見無駄と思われる作業が小学生ながらにして”良い”と思ってしまう。これが大勢の男子が骨法とかにハマるキッカケになると勝手に思っている。一見無駄と思える行動が実は~~
ってベストキッドじゃんそれ。映画ベストキッドは「ワックス塗って拭き取る」「ペンキ塗る」等々、一見空手と全く関係ない掃除を修行と言い張ってさせられるんだけど、いつの間にか空手の”受け”が完成されていたってパターン。これも弱い。ベストキッドにやられた男子は世界中にいると思う。ぶっちゃけて言うと最初から受けを教えた方が効率は良いと思う。そらそうだ。わざわざ掃除から空手をつなげる必要はない。ないが、そうじゃないのだ。「一見無駄と思われる行動が実は~」に超絶弱いのが男の子なの。
ここまで来たらドラゴンボールだってそうだったんだよね。
亀仙人の修行は重い亀の甲羅を背負って畑仕事とかお使いがメイン。これで本当に強くなるのか~と弱音が出る気持ちもわかる。だって武道の修行してないもん。
しかし、いざ甲羅を脱ぐと半端ないほどのジャンプ力が見についていたり、大きな岩を動かせる程のパワーを手に入れている。これには悟空とクリリンも納得。亀仙人はもっと重い甲羅を背負わせてさらに修行を続けさせる。
この重い甲羅方式に痺れないやつは男の子じゃない。
実際に重い亀の甲羅は売ってないが、手首足首に重りを付けるアイテムが存在するッッッッ!!!
小学生の頃、ホームセンターで見かけた事はあるだろう。あれだ。砂みたいなのが入っててクルっと足首や手首に付けれるやつ。1キロや2キロぐらいの重さだが、装着すると気分は「最高にマックス」を確定させてくれるアイテム。
そしてみんな手首や足首に巻いて学校に登校しただろう。僕もした。この重さで日常生活を送るとどうなってしまうんだろう?もしかして……もしかすると……ごくり。
ニヤァ…と気持ち悪い笑みで学校生活を送る自分がいたりしなかった?
少なくとも沖縄には一人いたよ。僕だ。
その結果どうなったか?重くて普通に鉛筆持つのだるいし、痒くなるし……外すよね。小学生には重すぎる。世界最強を目指すのにこの重さはまだ早い。大丈夫、家に帰ってから重りを付けてパンチとかキックしたらいいさ……と浅はかな考えをしてしまった結局永遠に付けなくなった重り。
一見無駄と思える行動が実は~~の魔力は異常に強い。
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話を夢の墨に戻そう。
夢の中で容器に入った墨を救って枠にハメているのがてっちゃぎだ。手慣れた動きで枠に墨を流し込んでいる。枠に墨が入ったら、枠を「墨固める機」に持っていってレバーを上下させ墨に”圧”を加える。そうやって墨に”圧”が浸透したら蓋をしてシェイクさせる。シェイクを10分ぐらいすると固まった墨ができるって寸法だ。
墨の大きさにもよるが、平均的な固まった墨だと全体で20分ぐらいで完成。大きさで変わるがだいたいそんなもんだ。
昔は固まった墨を溶かす所から手作業でやっていたって言うから大変だよね。
今は「墨溶かす機」があるから速攻で溶けるけど、昔は大変すぎる。いちいち固まった墨を刃物で削って鍋で熱を加えて溶かしてたみたい。だから現在も職人と崇められている人は指がない人が多い。当時は危険な仕事だったみたい。「墨溶かす職人」は僕もちょっと憧れている。
セットで語られガチだけど、「墨固める職人」もヤバイ。
今は「墨固める機」があるから速攻で固まるけど、当時はかなり時間がかかったらしい。らしいって言うのは僕が生まれる前に「墨固める機」が登場したから。
当時の墨固める手順は
1 木枠に溶かした墨を流す
2 「墨固まって欲しい剤」を加える(ここが職人の腕の見せ所)
3 プリンのように固まったら蓋をして固まっても問題無い所に置く
4 固まって欲しいと思いながら待つ
5 固まる
これが全部で2~3週間ぐらいかかる。季節によって全然固まらなかったり、雨の日は固まりにくくなったり大変らしい。また、「墨固まって欲しい剤」が景気の影響を受けて高騰したり、原材料が台風の影響で取れなくなったり。。。
とにかく大変なのだ。現在は誰が固めても一緒の固まった墨だが、ハンドメイドで作られたアンティークの固まった墨はとてもじゃないが手の届かない値段で取引されている。お宝ってやつだ。僕もいつかは作ってみたい!!と思っている。そのいつかはいつなの?とかは聞かないでくれ。まだまだ、雇われ墨固め作業員なのだ。
休憩のチャイムがなった所で手を止めて、機械をオフにする。
小学校や中学校で使われている「固まった墨」は企業秘密だが、「混ぜもの」だ。
オーガニックスミじゃあない。ぶっちゃけて言うと5割墨で残りは化学薬品で構成されている。初めて聞いた人も多いだろ。夢だから言える話だ。
残りの5割は詳しく聞いたことはないが、
『溶けた墨を素手で触らないこと!!!』
と大きく注意書きが作業場に貼られているので人間に良くない事は確かだ。固まったらいいのか??とか疑問は尽きないが、子供に良くない墨を与えている後ろめたさはある。
「自分に子供ができたらそんな墨は使わせられないっすねwww」
みたいな世間話をするが、しがない給料の作業員の息子はどうあがいても
マゼモンの墨
を使う選択肢しかない。しかもパパが作った混ぜもの墨だ。将来どんな影響が習字に及ぼされるか……想像したくないが、、、現実はすぐそこだろう。
TVで流れるどうでもいいニュースを流しながら弁当を流し込む。
固まってない弁当。溶けた弁当。墨と何が違うんだろうな。俺らも枠が固まってるだけで中身はドロドロだ。墨人間。墨男。くだらない事考えてないで仕事に戻ろう。
僕は墨職人になる気はない。小学校の時にマゼモンの墨で書いた夢は
那覇から名護まで歩かないでいい道路を作る事だった。
今となっては馬鹿げた話だが、数メートルなら駅や空港で使われている。あれを、那覇から名護まで伸ばすだけだ。車社会を変えたかった。交通事故に10回合っている僕からしたら車は鉄の城だ。便利で恐怖って毒親やDVする人みたいだ。横エスカレーターさえあれば!と先生に力説したが、所詮子供の夢話。相手にされなかった。相手にされないなりに、自分でその道に進み将来を夢に近づける努力をしていればいいのだが、、、結局見栄っ張りで話だけ大きい僕は楽な方に。楽な方に人生を勧めていった。そしていつも誰かのせいにしていた。本当は「ホームセンター専門学校」に入りたかった。
祖父の家ではレーズンが大漁にあり、おかげでレーズンがそんなに好きじゃなくなった。パンや餅。何にでもレーズンを挟むレーズン勢を憎んだ事もある。
そんな時に癒やされたのがホームセンターだ。ホームセンターはなんだってある。一生使う機会がないであろう、超強力ボンドや見たこともないガムテーム。そしてペットコーナーに必ずいるグッピー。メスグッピー。オスグッピー。
ホームセンター1級とは言わないが、自分のホームセンターを立ち上げるには最低でも2級はいる。現在沖縄で最高ホームセンター段位は目位区段だ。次が感謝段。差区模斗段と続く。
でも親から「大学ぐらい入っておきなさい。ホームセンターも習えるからね?」と安牌な方向に誘導され(本当はホッとしていた)全自動ホームセンターの道を諦めた。自分で本当は諦めた。何人もホームセンターを目指して挫折する人を知っているから怖かったのだ。挫折するのが怖かった。自分がホームセンターに選ばれないのが怖かった。あの大きいおさるさんに選ばれないのが。
それが今は30過ぎて「墨工場」の作業員だ。給料は低い。低いが仕事はきつくないし、同僚も悪いやつはいない。たまに休日出勤が入るが嫌いじゃあない。墨業界も資格をとって頑張ればガンガン上に進める。同期で入ったやつはいつの間にか宜野湾支店の営業部長になっていた。高給取りで女にもガンガンモテる。羨ましい……羨ましいが自分はずっと同じ楽な作業を永遠に選んだのだ。女の子に拒否られるのが怖いからな。そんな自分を下げてプライドを保っていた。あと5時間がんばりますか~と重い腰を上げながら墨を救おうとした時に事件は起こった。
正直いってあまり覚えてない。
ただスローモーションで隣の「溶けた墨」に体半分突っ込んでいる同僚を目にしたことはハッキリと覚えている。
そこで夢がさめた。
もおおおおおお!!!!続き見たかったな!!!夢最高!
って言う夢見たいなって妄想です。
いつものことです。