戦後、沖縄には多数の米軍基地が建設された。なぜこんなにも沖縄に米軍基地が建設されたのかは最近放送されたNHKスペシャルが詳しい。
本土から沖縄人数万人を強制的に移動させ、米軍内での陸軍や海軍の対立もあり激動の時代を迎えることになった沖縄。
その沖縄に多数の米軍基地が建設されたのだが、基地で働く内容は「守秘義務」によってあまり語られる事がなかった。一度基地で働くと重くのしかかる「守秘義務」。そして自分たちの家族や親戚、友人を殺したアメリカ軍で働く最大級の後ろめたさ。罪悪感。度重なる要因があり、戦後の基地で働くウチナーンチュの話はタブー中のタブーであった。
しかし、沖縄タイムスの執念と情熱の取材によりあまり知ることのなかった戦後の米軍基地で働くリアルな話が書かれているのが「基地で働く―軍作業員の戦後」である。
第1章 基地を作る/守る
第2章 戦場は隣に
第3章 あこがれと反発と
第4章 猛毒物質と知らされず
第5章 特殊部隊
第6章 シンポジウム、記者座談会、コラム
目次に目を通すだけで戦後の基地で働く異常さがわかる。
戦後の沖縄では戦争で何もかもが焼けて働く場所すらなかった。圧倒的な貧困がウチナーンチュを襲う。
そして、米軍も基地で働く人材が欲しかった。
両者の思惑が嫌な所で一致して、一部のウチナーンチュは基地で働く事になる。
そこでウチナーンチュは理想と現実。貧困と戦争負担の苦悩に大いに悩まされる事になる。
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基地で働く当時の様子のインタビューがこれまた面白い。面白いと言うのは失礼かもしれないが、現代的ではなさ過ぎるのだ。あまりにも現実味がないって言ったほうがいいかも。
アメリカ陸軍CICの調査や、基地内でのヒエラルキーでフィリピン人より格下の扱いを受ける沖縄人。アメリカ人が人権や労働組合うんぬんを語るので、なら沖縄人にも人権はある!労働組合を作ろうと立ち上がった数人の勇気ある人達。
その労働組合と家族との板挟みに直面する苦悩。
ベトナム戦争時に、高江でベトナム人役をわけもわからず演じさせられた人。
人を殺す道具を整備する悩み。ベトナム戦争に加担しているのを感じさせられる仕事。
実際に読んでみてわかる同じ沖縄人に対する後ろめたさ。これが強烈にくる。新しい基地を建設すると知らず、同じウチナーンチュを排除する話は胸迫る。
米軍基地で働くと純粋に給料がいいのだ。他の仕事より給料がいいので下手に逆らえない。そこを逆手にとって横柄な態度をとる米兵も多かったらしいが、みんながみんなってわけじゃない事もわかる。そりゃそうだろう。
ベトナム戦争時の米兵は読んでいるこっちが切なくなるぐらい自暴自棄になっている。
また、謎の有毒物質が漏れた事件も目を疑う。あの「サリン」が基地内で漏れていたとか。身の毛もよだつ普通じゃない事件しかおきない。
はっきりいうと、米軍基地があるかぎり平和はない。
むしろ米軍基地自体が危険に満ち溢れているからだ。銃弾を分ける作業は読んでいる時はそこまでだったが、読み終わって考えるとゾッとする。
米軍の戦闘機が墜落した事件は言わずもがな。基地で爆撃機が爆発した事件などこの本を通して初めて知った。
これが戦後間もない話だからってわけじゃない。現代だってそうだ。基地は戦争をする施設なのだ。これは明確にしないといけない。その基地が膨大な敷地をしめる沖縄は戦争をする島になっているんじゃないのか?現にベトナム戦争と沖縄は切っても切り離せない事実がある。
実際に、米軍基地で働くウチナーンチュが船でベトナムに行っている事が本にかかれている。アフガンの時だってそうだ。迷彩服が変わるのがいい証拠だろう。
「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」 ベトナム帰還兵が語る「ほんとうの戦争」 (講談社文庫)
- 作者: アレン・ネルソン
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ウチナーンチュが米軍基地で働くとはどういうことなのか?
その答えが書かれている本だ。まさにリアルな沖縄の戦後を知るにはうってつけの一冊。
是非とも読んで欲しい。
上記の本を教えてくれた友人に感謝。